最高裁判所第一小法廷 昭和24年(オ)297号 判決
第一点 本件の農地賃貸契約の合意解除がなされた昭和二十一年五月三十一日当時施行されていた農地調整法(昭和二〇年法律六四号の第一次改正を経たもの)九条一項、三項は、賃貸借の解約について制限を加え、市町村農地委員会の承認を受くべき旨を定めているが、所論とは異り、賃貸借の両当事者による合意解除については、別段制限を加えてもおらず、また市町村農地委員会の承認を受くべきことをも必要としていないと解するを相当とする。それ故、本件賃貸借の合意解除は適法であると言わなければならぬ。なお所論は、本件賃貸借解約の申入は正当の事由がないと主張するが、原判決の説明するところによつて、本件合意解除の正当なことは、当裁判所においても首肯することができる。原判決の理由は、すべて結局正当であるから、論旨は採ることを得ない。
第二点 農地調整法九条一項、三項と賃貸借の合意解除との関係については、前に述べたとおりである。なお論旨は、上告人が本件解約を応諾したのは、被上告人の強要によるものであるとの主張に対し、原判決は強要によるものでないと判示したのを非難しているが、それは結局事実認定の誤りを主張するに帰し、上告適法の理由と認め難い。原判決が強要でないと認めたことは、その説明によつて当裁判所においても首肯し得るところである。それ故、この論旨も採ることを得ない。
よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判官 真野毅 斉藤悠輔 岩松三郎 入江俊郎)
上告代理人弁護士岩淵止の上告理由
第一点
原判決は法の解釈と適用に違法がある。
農地調整法第九条第一項は農地賃貸借契約の解約、更新拒絶等の制限規定であつて、本法中最も主要な規定である。従つてこの法条の解釈は同法の進歩的な立法趣旨と社会情勢を高度に把握してなされなければならぬは言をまたない。
被上告人の本件農地の賃貸借の解約申入れは法第九条第一項但書に該当するものであるが、本条の解約の申入れについて正当の事由があるかどうかは、客観的な社会事情、経済状態、両当事者の境遇利害、生産力の増否等諸般の事情を斟酌して、賃貸人が自作することがやむを得ないものと認められるかどうかによつて判断されねばならないのであつて、単に賃貸人が自作するというだけでは足りないことは勿論である。然るに原判決は訴外皆川作次が堀越村長植木茂衛等の幹旋によつて任意に返還したものであり、該皆川は田一町二反、畑二反を耕作していて、本件農地を返還するも生活に支障を来さないという趣旨の下に一方的に被上告人の解約が正当の事由ありとし、この被上告人の耕作面積、能力その他の営農状態、生産力の増否、社会的地位、幹旋立会者の性格等の判断を埒外においたことは、解約申入れをなす者の立場を制限した同法の趣旨に違背するものである。
次に合意解約には本法第九条第三項の規定が適用さるべきかどうかの点であるが、上告人は原審においてこの法条を適用すべきであり、従つて被上告人は堀越村農地委員会の承認を得ずしてなした行為は違法なりと主張したのであるが、原判決にはこの点に対する判断が摸糊として不明であるけれども、上告人の主張を採用していない点より推して、右主張は排斥されたものと思料されるのである。抑々農地調整法は大正後期より昭和十三年の本法制定当時迄の長年に亘る不景気と打ち続く不作等影響を受けて、小作関係の紛争が激発し、小作地の争奪が増加した為にこの社会状勢に対応し、耕作農家の生活の安定と農業生産力の維持増進を企図して制定されたものであつて、耕作者保護をこの法の一貫した精神としているのである。
然るに地主、小作人の関係を見ると伝統的な隷属関係が依然としていて、小作人は経済的、経済外的な力に伏するの環境が温存され来つている実情で、農地の返還に当つては両当事者対等の力の下に交渉されるということはなく、常に小作人は不利において犠性を忍ばしめられているのであつて、これと前叙の立法趣旨とを考量するときは昭和二十二年十二月二十六日法律第二百四十号本法中改正法施行前においても所謂合意解約に同法第九条第三項の規定が適用されねばならぬはいうまでもなく、従つて当然同項の解約の中には合意解約を含むと解すべきである。然らざれば農地引上げの頻発した実情の下においては本法条は蓋し死文と化したであろう。この点に関する上告人の主張を排斥した原判決は違法であるといわねばならない。
原審裁判所は叙上の如く上告人の主張を排斥し、本件農地の賃貸借の解約を適法且つ正当なものとして、自作農創設特別措置法第六条の二第一項第一号を適用したこの判決は破毀せらるべきものである。
第二点
原判決は理由を附せざる違法がある。
上告人は原審において農地調整法(昭和二十年十二月二十九日法律第六十四号)第九条第三項の適用ありとし、この承認を得ざる本件農地の賃貸借の解約は違法なりと主張したのに対し、原判決は「右解除の行われた昭和二十一年五月三十一日当時は昭和二十年十二月二十九日法律第六十四号農地調整法中改正法律の施行中であつて、同法第九条には農地の賃貸借を解約するには市町村農地委員会の承認を受けなければならない旨の規定があつたが、当時はその後の改正法律によつて設けられたようなかゝる承認を受けないでなした行為が効力を生じない旨の明文を欠いていたのであるから、たとえ罰則の定めはあつたにせよ前叙のような経過によつて成立した合意上の解除の効力を否定することを得るものでない」としているが、上告人は斯る合意解約の効力を争うものではなく、たゞその承認を受けずしてなした行為は前述の通り同法第九条第三項に違反していると主張したのである。斯様にその理由が極めて瞹昧であつて捕捉することができない。
次に上告人は皆川作次が本件農地の返還を承認したのは被上告人及び村長植木茂衛等に強要されてやむなく応諾したのであると主張したのに対し原判決は「右示談の際には渡辺重平が農民組合を代表して出席していたし又先に控訴人が五筆の田を耕起した際には農民組合員多数が来援して打ち返したことは既に認定した通りであるから、もし皆川作次の返地が第三者の強要に基くものとしたら同人又は農民組合側が控訴人において二筆の耕作を継続することを黙視する筈はなく、従つてこれを控訴人が今日に至る迄耕作を継続している事実を併せ考えるときは前記証人皆川作次、加藤忠治の証言は著しく事理に反し到底措信するを得ない」として強要による合意にあらずと断定しているが、これは農民の常識に反すること夥しいものである。原審裁判所は上告人の地方における農村社会の実情、農民の心理を何等把握することなく、たゞに本件農地の返還に農民組合が参画した事実を強く拉し来つて、しかもこの農民組合に対する認識が現在における進歩的な組合の認識を通じてなされていて、名実伴わざる該組合を窺知せず、又小作人の経済外的な力の弱きこと、紛争を継続して社会不安の因をつくるを好まない保守的な農民の心理を忘却した不合理且つ不備な理由を附し、更に皆川作次は家族八人、田一町、畑二反を耕作して同村の一戸当り平均耕作面積一町四、五反に匹敵するから、本件農地の返還をなすも生活に支障を来さずという理由のみであつて、第一審判決摘示の被上告人の家族八人、田畑三町一反を自作するの事実にふれず、斯る大農家が如何なる事由で本件農地の賃貸借の解約が正当なりやの本件における最も重要なる点の理由を附していないのである。斯の如き審理不尽、理由不備の原判決は著しく違法なものである。
右の通り第二審判決は法令に違背して居り且つ理由に不備がありますので民事訴訟法第三百九十四条及同法第三百九十五条第一項第六号に則り茲に上告理由書を提出致します。
以上
第一審判決の主文および事実
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は、堀越村農地委員会が原告所有の新潟県北蒲原郡堀越村大字堀越字石船渡戸千六百六十五番田一反十歩、同所千六百六十六番田一反十歩について定めた農地買収計画はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として陳述した事実の要旨は、原告は、右石船渡戸千六百六十五番、千六百六十六番の田の外同所千六百六十七番田一反十歩、千六百六十八番田一反十歩、千六百六十九番田四畝五歩の五筆合計四反五畝十五歩を所有し自らこれを耕作してきたのであるが、昭和十五年三月原告の長男量義が農学校に入学することになつたので同月中訴外皆川作次の懇請により、右五筆の田を量義が農学校を卒業するまでの間一時小作させるという約束で賃貸した。而してその後、昭和二十一年三月右量義が新潟県立加茂農林学校を卒業したので、原告は皆川作次に対し右土地の返還を求めたのであるが、同年五月三十一日訴外植木茂衛外二名の斡旋により、原告は皆川作次との間に右土地の中千六百六十五番、千六百六十六番の田二筆合計二反二十歩(本件土地)につき賃貸借を合意解除し、即日その引渡を受け爾来これを耕作してきたのである。ところが、堀越村農地委員会は昭和二十三年四月二日本件土地につき皆川作次の請求により昭和二十年十一月二十三日現在の事実に基いて買収計画を定め、即日その旨公告したので、原告は昭和二十三年四月十五日異議の申立をしたが同月十九日却下せられ、同年六月八日被告に訴願をしたが同年七月二日附を以て之が棄却の裁決があり、右裁決書は同年八月二十六日原告に送達せられたのである。しかしながら本件土地は前記の如く原告の長男量義の就学により一時賃貸したものであるのみならず、前記賃貸借の解除当時原告は家族九名内農耕従事者五名で田畑合計二町五反歩を自作していたのであるが、皆川作次に於ても家族八名内農耕従事者四名で本件土地を含め田畑合計一町五反歩を耕作しておつて、本件土地を原告に返還しても何等生活に支障を生ずることはなかつたのである、従て本件土地の前記賃貸借は適法且つ正当に解除されたものであるから、本件土地は自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号により買収から除外せらるべきものである。仮に、右賃貸借の解除が適法且つ正当でなかつたとしても、皆川作次は原告が前記の田五筆合計四反五畝十五歩を賃貸した当時原告所有の他の小作地七反余について小作米の滞納が九石余あつて之を年賦で支払う約束をしたのに拘らず之を履行せずその後昭和二十年度まで滞納があつたもので本件遡及買収の請求は自作農創設特別措置法第六条の二第二項第二号に所謂信義に反するものである。従つて、本件土地につき定めた農地買収計画は違法であるからその取消を求めるため本訴に及んだのであると謂うに在つて被告の主張事実を否認した(証拠省略)。
被告指定代理人は、主文と同旨の判決を求め、原告がその主張の田五筆合計四反五畝十五歩を所有しこれを耕作してきたが昭和十五年三月これを皆川作次に賃貸したこと、原告の長男量義が昭和二十一年三月加茂農林学校を卒業したこと、原告がその主張の頃より本件土地を耕作していること、堀越村農地委員会が昭和二十三年四月二日皆川作次の請求により本件土地について昭和二十年十一月二十三日現在の事実に基き買収計画を定めてその旨公告したこと、原告がその主張の如くいずれも排斥せられ被告の裁決書が原告主張の日に送達せられたこと、昭和二十一年五月三十一日当時における皆川作次の家族ならびに農業従事者の員数、耕作面積が原告主張の通りであること、及び皆川作次が原告主張の田五筆を賃借した原告所有の他の土地七反余を小作してあつてその主張の如く昭和二十年度まで小作米の未納があつたことはいずれも認めるが、昭和二十一年五月三十一日当時における原告の家族農業従事者の員数、ならびに耕作面積の点は不知、その余の原告主張の事実は否認する。原告は従来主として雇傭労力に依存して農業を経営していたのであるが、昭和十五年頃より農業労力の不足によりその経営が困難となつた結果皆川作次に本件土地を含む前記田五筆四反五畝十五歩の耕作を依頼したので、皆川作次は当時余裕労力はなかつたが右依頼を断り得ず已むなく先代以来小作してきた訴外波多野庄治外一名所有の農地を手放し原告所有の前記五筆の田を小作するに至つたものであつて、原告主張の如く長男量義の就学のため一時賃借したものではないのである。而して、皆川作次は昭和二十一年五月八日原告より前記五筆の田につき返還の要求を受けこれを拒絶したところ、原告は恣に該農地に立入り約三反歩を耕起したため両者間に紛争を生じ、その後堀越村の村長植木茂衛、助役小見重平等の斡旋により本件土地を原告に返還して解決すべきことを強要せられたのであるが皆川作次は之に応諾しなかつたのである。仮に皆川作次が本件土地の返還を承諾し原告との間にその主張の如く合意解除が成立したとしても、皆川作次は前叙の如く強要せられて已むなく本件土地の返還を承諾したのであつて又これが返還によりその生活に支障を来したのみならず、原告は右解除につき農地調整法第九条第三項による承認を得ていないのであるから本件土地の賃貸借の解除は違法且つ不当であると謂わざるを得ない。又原告主張の小作米の未納は、もともと、原告が悪作の場合でも小作料の減免をしないことが多く或はこれをなしても他の地主に比較して減免の割合が低いため、皆川作次の先代の時から引続き生じたものであつて已むを得ざる事情にあつたのみならず右小作米の未納については昭和二十年暮頃までに精算を遂げ支払を了したのである。従つて本件土地につき遡及買収の計画を定めたことは何等違法ではないと答弁した(証拠省略)。
第二審判決の主文、事実および理由
一、主 文
原判決を取消す。
堀越村農地委員会が控訴人所有の新潟県北蒲原郡堀越村大字堀越字石船渡戸千六百六十五番田一反十歩、同所千六百六十六番田一反十歩について定めた農地買収計画に関する控訴人の訴願を却下した被控訴人の昭和二十三年七月二日の裁決は之を取消す。
訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。
二、事 実
控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は本件控訴を棄却すとの判決を求めた。
当事者双方の主張は、原判決の事実に摘示した通りであるから、ここに引用する。
(証拠省略)
三、理 由
控訴人がその主張にかゝる新潟県北蒲原郡堀越村大字堀越字石船渡戸千六百六十五番、千六百六十六番の田(以上主文掲記の分)の外同所千六百六十七番田一反十歩、千六百六十八番田一反十歩、千六百六十九番田四畝五歩の五筆合計四反五畝十五歩を所有し、自ら耕作して来たが、昭和十五年三月中訴外皆川作次に賃貸し、爾後同人において耕作して来たことは当事者間に争がない。
控訴人は、右五筆は控訴人の長男中島量義が当時農学校に入学することになつたので、その卒業にいたるまでの間、一時小作をさせるという約定の下に賃貸したと主張するが、原審及び当審における証人小見重平の証言ならびに控訴本人の供述(原審は第一回)中この点に関する部分は採用しがたい。その他にこの事実を認定するに足る証拠はないから、右賃貸借は期間の定めのないものと認めざるを得ない。
しかるに、控訴人が訴外皆川作次に賃貸した前記五筆の内主文掲記の二筆を昭和二十一年五月三十一日頃より自ら耕作して来たことは被控訴人の認めるところで、控訴人はこれを耕作するにいたつたのは当事者間において右二筆に対する賃貸借を合意上解除し、その引渡を受けたためであると主張し、被控訴人は右合意解除の点を否認するからその当否を判断するに、原審及び当審証人小見重平(前記採用しない部分を除く)、植木茂衛、渡辺重平の各証言ならびに原審及び当審における控訴本人尋問の結果(原審は第一、二回、但し前記採用しない部分を除く)によれば、控訴人は昭和二十年秋頃より皆川作次に対し先に賃貸した前記五筆の返還を求めていたが昭和二十一年五月中皆川作次の了解を俟たないで右土地を耕起したため、同人は直ちに居村堀越村農民組合に報告し、同組合員多数の応援の下にこれを打ち返した事実があつたので、堀越村々長植木茂衛、同助役小見重平及び右農民組合書記長渡辺重平は事態を円満に解決せんとして、同月三十一日控訴人及び皆川作次を堀越村役場に招致して示談を勧告し、斡旋につとめた結果皆川作次は主文掲記の田二筆を控訴人に任意返還することを承諾し、爾後控訴人においてこれを耕作して今日にいたつた事実が認められる。
被控訴人は皆川作次が右二筆の返還を承諾したのは村長植木茂衛等に強要されて止むなく応諾したものであると主張し、原審及び当審証人皆川作次、加藤忠治はこれを裏書するような証言をしているが右示談斡旋の際には渡辺重平が農民組合を代表して出席していたし(右代表の点は当審証人渡辺重平の証言によつて明かである)又先に控訴人が五筆の田を耕起した際には農民組合員多数が来援して打ち返したことは既に認定した通りであるから、もし皆川作次の返地が第三者の強要に基くものとしたら同人又は農民組合側が控訴人において二筆の耕作を継続することを黙視する筈はなく、従てこれと控訴人が今日に至るまで耕作を継続している事実と併せ考えるときは前記証人皆川作次、加藤忠治の証言は著しく事理に反し到底措信するを得ないと共に他に右事実を肯定するに足る証拠はない。
次に被控訴人は右二筆の返還によつて皆川作次は生活に支障を来たしたと主張し解除の正当性を争うが、原審及び当審証人皆川作次の証言(前記不採用部分を除く)によれば、同人方は家族八人、内農耕従事者四名で田一町二反、畑二反位を耕作し現在の生活状態は更に二、三反の田地を保有することによつて、著しく改善される状況にあることが認められるが、原審証人渡辺重平の証言によれば堀越村の平均一戸当りの耕作面積は一町四、五反であることが明かで、皆川作次の保有面積は略これと匹敵することが窺われるから、同人が前記二筆を返還しても今にわかに生活に支障を来たすものとは解し得ない。従つて右二筆については、前叙の通り、当事者間の合意により賃貸借は解除せられたものと解すべきところ被控訴人は右解除は農地調整法第九条第三項の承認を受けていないから違法且つ不当であると主張するが、右解除の行われた昭和二十一年五月三十一日当時は昭和二十年十二月二十九日法律第六十四号農地調整法中改正法律の施行中であつて同法第九条には農地の賃貸借を解約するには市町村農地委員会の承認を受けなければならない旨の規定があつたが、当時はその後の改正法律によつて設けられたような、かゝる承認を受けないでなした行為が効力を生じない旨の明文を欠いていたのであるから、たとえ罰則の定めはあつたにもせよ、前叙のような経過によつて成立した合意上の解除の効力を否定することを得るものではない。
以上のように本件係争の田二筆に対する賃貸借の合意解除は何等違法又は不当の点なく、これを適法且つ正当であると認むべきところ堀越村農地委員会が昭和二十三年四月二日皆川作次の請求により右二筆に対し昭和二十年十一月二十三日の事実に基き遡及買収の計画を定め即日公告をしたことは当事者間に争のないところである。しかし農地に対する買収計画の樹立が適法且つ正当であるかどうかの認定は、市町村農地委員会の自由裁量に委せられた問題ではなく、所謂法規裁量に属する問題として具体的な法の適用を使命とする裁判所の最後的判断を俟つべきものであるから、本件田二筆に対する解除が適法且つ正当なる以上右土地は自作農創設特別措置法第六条の二第二項第一号の規定に該当する農地として買収を免るべきものであること言うを俟たない。
従て、堀越村農地委員会が昭和二十年十一月二十三日の事実に基きこれを買収すべきものとして定めた買収計画は違法であるところ控訴人主張のような異議申立及びその却下決定ならびに訴状及び裁決のあつたことは当事者間に争のないところであるから、右裁決の取消を求める控訴人の請求は正当として認容すべきものである。
よつて民事訴訟法第三百八十六条第九十六条第八十九条を適用して主文の通り判決する。